葬儀をしないで火葬のみで見送る、火葬式(直葬)の費用相場や流れ
- 2023年05月02日
お葬式手配の「よりそうお葬式」
身内に不幸が起きると、十分な時間もないままお葬式の準備をしなければなりません。だからこそ、事前にお葬式に関する知識を持っておくことで、いざという時に余裕をもってお葬式に臨むことができます。
この記事では、火葬のみを行う火葬式(直葬)についてご説明します。直葬では、通夜や告別式といったセレモニーを省略するため、一般的なお葬式とは流れが異なります。
事前に火葬式についての知識を知り、よりよい形で故人お送りできれば幸いです。丁寧に、分かりやすくまとめましたので、どうぞ最後まで読み進めてみて下さい。
目次
葬儀をしない火葬式(直葬)とは
火葬式とは通夜式や告別式などのセレモニーを行わず、ごく親しい方々で火葬のみを行う葬儀スタイルのことです。「火葬式」は、「直葬(ちょくそう)」とも呼ばれます。
従来は通夜や告別式を行うのが当たり前だったため、これらを省略しても大丈夫だろうかと不安に感じる方もいることでしょう。しかし、直葬をダメとする法律はありません。
「墓地、埋葬等に関する法律」には火葬や埋葬に関わるさまざまな事柄が定められていますが、お葬式の形式に言及はしていません。
また仏教では、お葬式の中で「引導」や「授戒」などの作法をして故人を送り出します。
もしお付き合いのあるお寺(菩提寺)がある場合はそのお坊さまに直葬・火葬のみでよいか確認した方が後々のトラブルを避けることができます。
火葬式が選ばれている理由
火葬式は、どのような方に、どのような理由で選ばれているのでしょうか。
とにかく葬儀・葬式を安い費用で済ませたい
葬儀には高額な費用がかかりますが、通夜や告別式を省略した火葬式であれば葬儀費用を大幅に抑えられます。そのため、お葬式に費用をかけられない、あるいは費用をかけたくないという人が火葬式を選んでいます。
火葬式にかかる費用についてはのちほど詳しく解説いたします。
身内のみの少人数で故人を送りたい
従来の葬儀では、親戚だけでなく友人や知人、会社関係者など、故人や遺族とご縁のある人がお葬式に参列すしていました。しかし、昨今では家族葬が普及し、少人数の身内だけで葬儀を行うのが当たり前となってきました。
身内のみの少人数の葬儀であれば、対外的に形式を気にすることなく、必要最低限の火葬だけできればいいのではないかと、火葬式が選ばれています。
葬儀・葬式に呼べる人が少ない
高齢化が進む現代では、故人の友人や知人もまた高齢となり、そもそもお葬式に呼べる人が少ない、参列者の負担になってしまうというケースが多く見られます。このような理由から通夜や告別式をせずに火葬だけにする人が増えています。
従来のお葬式の形式にこだわらない
伝統的に行われてきたお葬式のスタイルを好ましく思わない方、あるいは宗教心がなく、宗教者のいるお葬式に意味を感じないという方も、火葬式を選ぶ傾向にあります。
故人の遺志
「亡くなった時はお葬式はしなくてもいい」「火葬だけしてくれたら満足」というような、故人の生前の遺志を尊重して火葬式を選ぶ人も少なくありません。
火葬だけで問題ないのか?
火葬式にしたいけど、伝統的なお葬式の形を省略することは問題ないのか。このように考えて不安に思う方もいるのではないでしょうか。気持ちの面から火葬式を考えてみましょう。
最も大事なのはご遺族の「納得」や「満足」
火葬式を選ぶ理由にはさまざま背景があります。これで本当に弔えたのかと心配になることもあるかもしれません。
大切なのは、遺族が心の中で「納得」や「満足」をしたか、ということです。「家族全員で見送りをできれば満足」「宗教的な価値観は気にしない」と思い、満足、納得しているのであれば、故人もきっと満足、納得しているはずです。
一方でどうしても火葬のみでは寂しい、不安になるということであれば葬儀を行うことも候補に入れた方が良いかもしれません。
火葬式でも僧侶の読経はいただける
また、通夜や葬儀こそ省略するものの、火葬式であっても僧侶に読経してもらうことは可能です。
火葬場まで足を運んでもらい、お別れ室や火葬炉の前で読経をし、遺族は焼香をします。ただし、読経できるかは火葬場によって異なり、炉前での読経は出来ても5分程度になります。通夜や告別式の時のように本格的なものと比べるとかなり短くなることは考慮に入れてください。
火葬した後に供養してもらうこともできる
「火葬式だけで終えてしまったものの、やっぱりお坊さんに手厚く供養してもらいたい」という声は耳にします。
そして実に多くの方が、火葬後に改めてお寺と連絡を取り合って、供養をしてもらっています。
その時は良かれと思って火葬式にしても、いざしてみると不安や物足りなさを感じる方が少なくないということです。火葬式に納得や満足が得られなかった方は、お寺に相談してみて、事情を詳しくお伝えした上で、新たに供養してもらうことをおすすめします。
火葬式のメリット
火葬式には次のようなメリットがあります。
葬儀費用を大幅に安く抑えられる
火葬式の一番のメリットは葬儀費用を大幅に安く抑えられることです。
通常、通夜や告別式などのセレモニーを行う場合、葬儀にかかる基本費用、料理や返礼品などのおもてなし、お坊さんへのお布施などを含めて100万円近くの費用はかかってしまいます。
ところが、火葬式の場合は20万円から30万円程度で済みます。地域や葬儀社によっては10万円台で行うことも可能でしょう。
お葬式が一日で終わる
遺族の時間的負担の軽減も、火葬式のメリットのうちのひとつです。
従来のお葬式は、通夜と告別式を2日にまたいで行なわれていました。それだけでなく、遺族は準備や手配、打ち合わせなどに忙殺され、「葬儀といえばあわただしい」という印象を持っている方も少なくないでしょう。
火葬式の場合、火葬そのものは火葬場だけで1~2時間程度で終わります。また、打ち合わせに多くの時間を割くこともありません。
対外的な対応が不要
火葬式は基本的にごく近しい身内だけで行われます。
参列者がいないため、あいさつ回りやお礼を述べたりといった対外的な対応に追われることがありません。
また、香典の授受もないため、香典返しの手配も不要です。
火葬式のデメリット
一方で、火葬式には次のようなデメリットが生じる可能性があります。
物足りなさを感じてしまうかもしれない
従来の伝統的なお葬式の形であれば、故人様と最後の時間を十分に確保できます。しっかりと悲しみ、しっかり感謝を伝え、そして遺された者同士でその想いを共有しあえます。
ところが、直葬では葬儀に費やすさまざまな儀式や慣習を省略するため、故人と向き合う時間は火葬の直前のみとなってしまいます。
心の整理がつかないままお骨になってしまっていたいうことも少なくなく、人によっては火葬式に納得や満足ができず、物足りなさを感じてしまうかもしれません。
周囲の人たちから苦言を呈される可能性がある
故人や喪主本人は火葬式に納得していても、周囲の人たちの中には「ちゃんと弔えているのだろうか」と不安に思い、苦言を呈してくるケースもあります。
また、ごく限られた身内だけで火葬式行ない、事後報告で故人の逝去を伝えてしまうことで、「どうして声をかけてくれなかったの」と不満を漏らすことも考えられます。
火葬式にする時は、家族だけでなく親戚にも声をかけて、こちらの想いを伝えておくことが大切です。
菩提寺とトラブルになる可能性がある
葬儀を火葬のみで済ませたという事後報告では、お寺は枕経を上げることも、火葬炉前でお経をあげることもできません。菩提寺(先祖代々を供養してくれるお寺のこと)側としては、大切な檀家の逝去に際し、きちんと供養をして、戒名を授けなければと考えます。お寺は単なる管理人ではなく、日常の勤行を通じて菩提を弔っているという意識がありますので、事後報告では関係性が気まずくなることも考えられます。 なお、お葬式を省略しても、菩提寺との付き合いが途切れるわけではありませんので、戒名を授かる必要があり、四十九日法要などの法要や、納骨時には法要を営んでいただく必要があります。その度にお布施も必要となります。
火葬式の費用相場
火葬式の費用は葬儀社によって違いがありますが、他の葬儀方法に比べ大幅に費用を抑えることができます。
火葬式でも、状況や内容によって葬儀費用は変わる
火葬式にかかる費用は、遺体を搬送する距離や、火葬までの霊安室利用料、遺体保全用のドライアイス使用料、必須ではないものの火葬時の僧侶による読経の有無など、どのような火葬式にするかによって費用が異なります。
火葬場の種類(公営火葬場・民営火葬場)によっても費用は変わる
火葬場は、公営と民営の2種類があります。
全国的に見ると、ほとんどの地域が自治体が運営している「公営火葬場」ですが、東京都心など、民間企業が運営している「民営火葬場」もあります。
公営火葬場の費用は自治体によって異なりますが、安いところだと無料、高くても1~2万円程度です。
これに対して都心の一般的な火葬料金は7万5千円(東京博善グループ「最上等(星)」の場合。2023年2月現在。加えてサーチャージが追加になる場合があります)で、公営と民営でいかに料金差があるかがお分かりいただけるかと思います。
火葬式プランに含まれるもの、含まれないもの
葬儀会社の中には格安で火葬式を行えると宣伝しているところもありますが、あとから追加料金を求められることも少なくありません。プランの中に何が含まれているのかの確認は、とても大切です。
火葬式プランに含まれる主な品目は次の通りです。
- 寝台車での搬送(病院など~安置場所・安置場所~火葬場)
- お棺
- ご遺体安置料(火葬当日までの霊安室やドライアイス使用料)
- 骨壷
- 装飾具(炉前飾りや遺影写真、位牌、お別れ花など)
- 火葬許可など書類申請代行
これら以外に、火葬料金や僧侶を招いて火葬炉の前で読経を行う場合や、遺体搬送以外に移動用の車輌が必要な場合、火葬中の控室の利用、枕飾りや後飾りの設置などは、追加料金となります。
一般的な葬儀と火葬式との費用の違い
火葬式は、通夜や告別式を行う従来の葬儀に比べて費用を大幅に抑えられます。
一般的な葬儀費用の平均は121万円※であるのに対し、火葬式の相場は20万円前後です。最安値を打ち出しているところだと10万円を下回るところもあり、オプションを付けて満足度の高いものにしたとしても、40万円前後で行えます。
(※2017年 日本消費者協会 葬儀についてのアンケート調査より)
火葬式の流れ
ご臨終から、火葬式の手配や終了までの一連の流れをご紹介します。
1.臨終・お迎え(搬送)
故人が息を引き取ったら、速やかに葬儀会社に連絡しましょう。寝台車がお迎えに上がり、安置場所までご遺体を搬送します。
(ご自宅で看取られ、そのまま安置する場合でもドライアイス等が必要になります)
また、医師から死亡診断書を発行してもらいます。死亡届となる大切な書類となるため、葬儀社に預けます。
2.ご遺体の安置
日本の法律では、亡くなってから24時間は火葬ができません。そのため、ご遺体を一時的にどこかに安置しなければなりません。
安置場所は、ご自宅または葬儀会社や火葬場の霊安室など専用の安置施設のいずれかです。
葬儀社は、安置場所の提案、寝台車の手配、ドライアイスの手当てなどをしてくれます。
これらの費用は葬儀プランに含まれていまることも多いですが、移動距離や安置施設の利用日数によって、料金が追加になることもあります。不安があれば事前に確認しておきましょう。
3.葬儀会社との打ち合わせ
葬儀社スタッフと打合せをし、火葬の日程、火葬プランの選定、僧侶の有無などを決めていきます。
死亡届(死体検案書)の提出や、火葬許可書の申請など、火葬に必要となる役所への手続きは葬儀社が代行する場合がほとんどです。
4.納棺
故人の旅立ちの身支度を整え、棺へ納めます(納棺の儀式)。
納棺の際には、お花や、故人の好きだったものなども一緒に納められます。
5.火葬
火葬場に到着したら、火葬許可書を提出して、炉前にて故人との最後のお別れ(お別れの儀式)を行います。
そして棺のふたを閉めて、火葬を見届けます。火葬の前後で、僧侶による読経をいただくこともできます。
(火葬場によってはできない場合もあります)
火葬時間は火葬場によって異なりますが、おおむね、1~2時間です。終わるまで控室等で待機します。
火葬が済んでお骨になると、係員の指示に従って遺骨を骨壷に納めます。これを「拾骨」や「お骨上げ」と呼びます。
お骨とともに、お墓への埋葬の際に必要な書類となる火葬済印付の「埋火葬許可証」を受け取り、火葬式は終了です。
火葬式の場合の忌引きの日数
火葬式に限らずですが、お勤めしている場合は職場には忌引き休暇を申請しなければなりません。基本的に忌引きの日数は葬儀のスタイルではなく、本人と故人との関係性によって定められています。どれだけの日数を取得できるのか、まずは、社内規定を確認しておきましょう。
よりそうのお葬式の「火葬式プラン」
「よりそうお葬式」には火葬式プランのご用意があります。
お迎えから火葬日当日までのご遺体安置の後、お通夜・告別式を省いて火葬のみが行なわれるシンプルな葬儀スタイルです。
ご遺体安置については、お預かりが出来ます。ご面会が可能なプランもございますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
最も費用を抑えられる 【よりそうお葬式 シンプルプラン】
ご火葬前に最後の面会ができる 【よりそうお葬式 面会プラン】
ご火葬までご自宅で一緒に過ごせる 【よりそうお葬式 自宅安置プラン】
まとめ
通夜や告別式を省略した「火葬式」について、お分かりいただけましたでしょうか。
費用を安く抑え、時間もかからないというメリットは、一方で物足りなさを感じてしまうという側面があります。
故人にとって、そして送る側である私たちにとって、本当に満足できる葬儀の形を考えて頂ければ幸いです。
火葬式に関するよくある質問
男性の場合はブラックスーツに、白のワイシャツ、黒のネクタイ、黒の靴下と黒の革靴といういで立ちが基本です。
女性の場合は、ブラックフォーマル(アンサンブルやワンピース)で、靴やストッキングも黒で統一します。
ただしここでの喪主の務めは、死亡届の届出人、葬儀社との打ち合わせや支払い、そして火葬後の故人の供養などが挙げられます。身内だけのごく少人数で行われる火葬式では、一般的な葬儀のような参列者へのもてなしやあいさつは必ずしも必要ではありません。
火葬式は僧侶がいなくても実施できます。戒名を授からずに読経だけしてもらうということも可能です。
戒名が必要かどうかは、故人の遺志や遺族の想いが大きく左右します。故人をしっかりと供養したいと思うのであれば、戒名授与を僧侶に相談しましょう。
また、火葬式の時は読経が戒名がなくても、後日改めてお寺にお願いすることで、戒名を授けいただけます。
繰り返しにはなりますが、納骨ができない、改めてお葬式をする羽目になったなどのトラブルを避けるためにも納骨先がお寺であったり、お付き合いのあるお寺(菩提寺)がいる場合は必ず確認してください。
菩提寺がいない場合は「お坊さん便」などの僧侶手配サービスを利用することで戒名を授与してもらうことができます。
職場や地域の人など、訃報を伝えなければならない相手に対しては、事前に香典や供花などを辞退する旨を伝えておきましょう。
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お葬式手配の「よりそうお葬式」
監修者のコメント
岩田 昌幸 一般社団法人 葬送儀礼マナー普及協会
コロナ禍では、特に人が集まったり、食事をする席を設けることがNGとされていましたので、直葬・火葬式スタイルの葬儀が多くなりました。病院や介護施設では、外出制限や面会制限がありましたので、何カ月も、1~2年会えずに亡くなったというケースも珍しくありません。このような理由で直葬・火葬式でも、火葬までの間、故人と時間と空間をしっかり共有できる安置スタイルが注目されるようになりました。