葬式饅頭の由来(歴史)と地域による違い
- 2022年04月04日
お葬式手配の「よりそうお葬式」
最近、東京など都心部では「葬式饅頭」という言葉を耳にしないかもしれません。葬儀・葬式の返礼品にお饅頭が無いことも増えてきました。
一方で昔のしきたりを重んじ後世へ伝承したいという向きもあります。
本記事では、葬式饅頭の由来や歴史、地域による違いなど、解りやすく紹介します。
葬式饅頭とは?
お葬式をはじめ弔事の時に、故人からの返礼品の意味を込め粗供養としてお饅頭を配ることから「葬式饅頭」と言われています。
一般的には、お饅頭の入った箱に「志(お志・御志)」と書いた”のし紙”を付けて配ることが多いようです。
弔事には青白(緑白)、黄白等地域によって違いはありますが、祝事・弔事問わず正式な式典ではお饅頭が用いられます。
それには昔からの習わしが関わっているようです。また、何故お葬式に「饅頭」を使うようになったのか、紹介します。
葬式饅頭の真意はお布施にあった
「故人が残した財産は、生前故人が物欲を絶つことができず貯め込んだ証。亡き後は、世間様へお返しすることで、故人の(物欲の)罪を軽減し成仏できるようにする。」という意味を込めて故人の財産を「饅頭」に置き換えて、配るようになったのが葬式饅頭の始まりであり、また真意であるとされています。
基本理念は、仏教でいうお布施の「財施」をする行為が背景にあったのですね。
当時は物のない時代、甘いお菓子は中々口にすることは出来ず、饅頭は貴重な存在でした。お布施に値するほど価値のある食べ物だったのです。
因みに、それより以前は饅頭ではなく小銭を紙に包んだ「おひねり」を配っていた時代もあったそうです。
葬式饅頭の由来(歴史)
何故お葬式に「饅頭」を使うようになったのか、歴史を紐解いていくと、より理解が深まります。
饅頭のはじまりは、三国志の諸葛孔明にあった
「事物起源」という中国の文献によると、かの有名な諸葛孔明が軍と共に凱旋していたさ中のこと。濾水という川が氾濫して一歩も進むことが出来ず困り果てていました。
その地域では、「蛮人49人の首を切り、川の神にお供えすると川の氾濫は収まる」という言い伝えがあり、蛮人49人の首を切るように進言されたのです。
そこで考えた孔明は小麦粉を用意させました。その小麦粉を練りはじめ丸くまとめて、まるで人の頭のように49個作ったのです。そして蛮人の首の代わりに川の神にお供えをしました。すると見事に氾濫は収まったという話が載っています。
以来、饅頭は神へのお供え物として崇められるようになったということです。
饅頭は神へ捧げる神聖なもの
諸葛孔明の逸話以来、饅頭は大地をも鎮める力を有する神聖なものと特別視されるようになりました。それから後も、饅頭は品位を保ち続け、神へ捧げる神聖なものとして伝承されているのです。
今でもその概念は引き継がれ、儀式には献上品として饅頭が用いられ、式典の時には紅白饅頭が配られます。そしてお仏壇やお葬式のお供え物にも使われ続けているのです。
日本で最初の饅頭は「奈良饅頭」
日本では、1349年頃のことです。宋から来た林浄因(りんじょういん)という人がお饅頭を作り、作った場所が奈良だったことから「奈良饅頭」と呼ばれたのが始まりとされています。
その頃の饅頭は中身が羊や豚の肉だったのですが、仏教では肉食は禁止の為、代わりに餡を使いました。
それ以来、日本では中身が餡で、皮は小麦粉やそば粉を練ったものを饅頭と言うようになったと言われています。
葬式饅頭の地域による違い
地域によって葬儀の仕方に違いがあるように、葬式饅頭にも違いが見られます。
関東地域
春日饅頭
楕円形(小判型)の白い薄皮の中央にシノブヒバの型を焼きつけてあり、中身はこし餡です。
別名(別称)「しのぶ饅頭」「檜葉(ひば)饅頭」とも呼ばれます。
他にも模様としてひのきの葉、柏の葉、モミジなどが焼き印されています。大ぶりですが基本的には片手にのるサイズです。
春日饅頭は東北地方や甲信越地方でも用いられ、青森では直径30cm位或いはそれ以上の大きな饅頭を使用していることもあります。
緑白(青白)饅頭
緑(青)と白の小麦まんじゅう二色セットで用いられ、緑(青)は抹茶を配合しています。中身は主にこし餡ですが粒餡の場合もあるようです。
昔からの習わしでは、弔事はこし餡、祝事には粒餡といわれていますが、最近はあまり気にせず使っているケースがあるようです。
その他、和菓子屋さんによると「最近は緑白(青白)くす玉等も使われている」とのことです。
関西地域
黄白饅頭
黄白饅頭は米粉または小麦粉に山芋を練りこんだ皮の饅頭で、黄色と白色の二色セットで用いられてふっくらと蒸しあげた中身はこし餡です。
この山芋を練りこんだ饅頭を薯蕷饅頭(しょよまんじゅう/じょうようまんじゅう)とも呼びます。
上用饅頭とも書いたりします。
おぼろ饅頭
お饅頭を蒸して上皮をむくことでおぼろ状にしたもので、中身はこし餡です。
利休忌の茶事にも使われる饅頭です。
北海道
北海道の葬式饅頭は「中華まんじゅう」ですが、コンビニなどにあるひき肉の入ったまんじゅうとは全く違います。
どら焼きのような焼いた小麦粉の生地にあんを二つ折りで包んだもので、半月型をしています。
20cmほどの大きさのものもあり、バナナのようにも見えます。
通常のまんじゅうと違い、あんが熱くても関係なく作ることができ、そのあと蒸す必要もありません。作りやすいために葬儀に参列する人が多い北海道では重宝がられて広まったのではないかといわれています。
その他の地域
その他、お饅頭に拘らず羊羹やおはぎを用いる地域もあります。
またパンを「葬式パン」として配るところもあります。
例えば岡山の一部地域、鳥取、島根などの山陰地方では、元々はあん入りの餅を配っていたようですが、準備が大変なので「菓子パン」が配られるようになりました。
初めはあんパンが主だったようですが、今では菓子パンなら何でもアリ、というようです。
静岡県の一部では平(ひら)パン、お平パン(おひらぱん)とも呼ばれるお菓子が配られます。
小麦粉と卵と砂糖という素材の味がおいしい昔ながらのお菓子で、堅パンという方もいます。
この平パンとゼリー菓子(グミのようなお菓子)がセットで配られることが多いようです。
紅白まんじゅうを配るところも
沖縄では90才(88才~とも)を超えて亡くなった方のお葬式に限り紅白の饅頭が配られます。
天寿を全うした、長寿にあやかる、という意味です。
福島でも長寿の方の葬儀に、紅白まんじゅうやお赤飯を配ることがあるようです。
葬式饅頭のおいしいアレンジ
固くなった葬式饅頭、おいしく食べるには
葬式饅頭はだいたい製造してから2~3日しか日持ちしないので、すぐ食べないのであれば冷凍をおすすめします。
消費期限は外装に記載されていますので、それぞれしっかり確認しましょう。
冷凍は2週間という意見と2か月程度まで持つ、ともいわれますが、なるべく早めに頂きたいものです。
また、少々時間がたって固くなった葬式饅頭を美味しくアレンジするレシピをご紹介します。
冷凍したまんじゅうを使う場合は、先に自然解凍します。
蒸し直す
固くなったら、基本は蒸し直しましょう。
方法は3つあります。
①炊飯器で蒸し直す
ご飯を保温中の炊飯器のごはんのうえにラップを敷いて15分程度置きます。
②蒸し器で蒸し直す
蒸し器で5分の強火、火を止めてから10分蒸らしましょう。
③電子レンジ(500W)で蒸し直す
水を吹き(さっとくぐらせても)、ふんわり上からラップして 15~30秒ほど。
時間は目安で、饅頭の個数やお使いの器具で変わります。
焼いて「焼きまんじゅう」
焼きまんじゅうもおすすめです。トースターで焦げ目が少しつく程度焼きます。
焦げすぎてしまいそうなら、途中でアルミホイルをかぶせます。
フライパンで焼く方法もあります。バターか油で両面がキツネ色になるまで焼きます。
油っぽくならないようにするのが少し難しいです。
揚げまんじゅう、天ぷらまんじゅう
饅頭を油で「素揚げ」します。表面がカリッとして美味しくなります。
天ぷらまんじゅうは、名前の通り饅頭に天ぷら衣をつけて揚げます。またはホットケーキミックスをつけて、表面をカラッと揚げてもおいしくなります。
基本の小麦まんじゅうレシピ
家で作ってみたい方へ、基本の小麦まんじゅうのレシピをご紹介します。
材料(12個分)
薄力粉 90g
砂糖(上白糖) 50g
水 25cc
ベーキングパウダー(BP) 小さじ1/2
あん(こしあん、粒あんお好きな方で) 300g
※1個あたりのあんを25gとしていますが、お好みで30g程度でもOK.
(作り方)
1.あんを12個に丸めておく。
2.上白糖と水をあわせてすり混ぜる。
3.薄力粉とBPを一緒にふるったものに、2を加えてヘラでさっくり混ぜる。
4.薄力粉(材料と別)を敷いた場所で生地を手で揉んで耳たぶくらいの柔らかさにしたら、12等分する。
5.あんを適度に伸ばした生地で包む。
6.蒸し器で中強火で12~15分蒸す。
BPや重曹よりも、イーストパウダー(蒸し菓子用のふくらまし粉)を使う方が白くきれいに仕上がります。イスパタとも呼ばれ、製菓材料店などで販売されています。
まとめ
日本では葬儀だけではなくお祝い事にも饅頭が配られ、饅頭は慶弔菓子の基本です。
そして葬式饅頭といっても、地方によって全然違うことがおわかりいただけたと思います。
購入場所は主に和菓子屋さんやスーパー、デパートなどですが、地域によって簡単に手配できる場所が異なります。迷うことがあれば親戚や周りの方へ聞いてみましょう。
饅頭を受け取ると何だか懐かしい気持ちと安心感のようなものを感じたりします。
古くからの慣習は少しずつなくなっていくものも多いですが、葬式饅頭は葬儀における文化として残っていってほしいですね。
お葬式手配の「よりそうお葬式」
監修者のコメント
竹内 義彦一般社団法人 終活協議会
最近では葬式饅頭を見る機会はほとんどなくなりましたね。家族葬や直葬などお葬式が小規模化していることと関係性があると思いますが、なくなっていく慣習もその由来を知ることで、背景にある社会の変化を感じる機会にるのではないでしょうか。